「ボジョレー……なぁ」
トップニュースに流れる解禁日のニュースに、獄寺は微妙な顔になる。
赤ならカベルネかシラーのフルボトルを好む獄寺にとって、若さが取り柄のようなボジョレー・ヌーヴォーは、好みのラインとは明らかにずれている。
が、基本的に祭りごとは嫌いではない。

「……で、獄寺君。これはどういう事態なのかな」
「ボンゴレヌーヴォーですっ、十代目！」
「……」

知らない間にイタリアのボンゴレ本部と交渉していたらしい。
11/18木曜日、ボジョレー解禁に対抗して、取り寄せたボンゴレ所有のワイナリーの新酒を樽で取り寄せて、カウントダウンと共に、部下達に振るまった。
ただ酒を遠慮するような殊勝な部下は、獄寺の配下には一人もいないおかげで、午前１時には、酔っ払いの一個小隊が出来上がっている。
「……あーあ、お兄さんも」
部下に交じって、隅で酔いつぶれているのは、晴れの守護者で。
「……京子ちゃんに怒られそうだなぁ」
「十代目もどうぞ」
差し出されたグラスを、綱吉も受け取る。
乾杯、と苦笑まじりに、グラスを合わせれば、リンと澄んだ音が響く。

「……雲雀さんは？」
「あいつ、日本酒派なんで」
「ああ、そっか。雲雀さんらしいね」
くす、と綱吉が笑う。
「……まぁ、そのおかげ、かな」
綱吉は、獄寺が部下達から慕われていることを知っている。獄寺にその自覚の薄いことも。
今日くらいは、いいよね」
「十代目？」
何のことっすか？と首を傾げる獄寺に、ふふと笑って綱吉は答えない。
綱吉は、雲の守護者の、存外に独占欲の強いことも知っている、から。

今日くらいはいいよね、と。
綱吉は二杯目のグラスに口をつけた。

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